「クリスマス島」と名の付く島が世界に二つあります。
そのうちの一つ、オーストラリア領のクリスマス島をご存じでしょうか?
オーストラリアの西、どちらかというとインドネシアに近いところにあるクリスマス島はインド洋上に浮かぶ小さな島で、アカガニとジンベイザメで知られています。
今回はアカガニの不思議な大移動について紹介します。
このアカガニは名前の通り、茹でていなのに真っ赤な見た目が特徴です。
クリスマス島の固有種と言われていて、大きさは10センチ前後。
普段は山で生活していて産卵を迎える10月から12月ごろの満潮のときに一斉に山から海へと大移動してきます。
その様子は圧巻で、そこら中すべてがアカガニ!アカガニ!アカガニ!、初めて見たときは一面真っ赤でこれが全部カニと言われてもピンとこないほど埋め尽くされていました。
大移動のピーク時には一部の道路は通行止めになるほどです。
どんな種にとってもお産は命がけ。
人家や道路なんてアカガニにとってはお構いなしですよね。
クリスマス島は、面積の半分以上がナショナルパークで熱帯雨林がうっそうと生い茂っています。
アカガニの他にもヤシガニや青いカニ、鳥や虫もいっぱいいます。
アカガニは夜行性ではないようですが、日中、岩陰や土の中で暮らしていて、散策中はあまり目にすることはできませんでした。
住民も自然保護には大変熱心です。
「アカガニは大切に保護されていて、むやみな扱いは厳禁、食べるなんてもってのほかです。」という話をガイドから聞きましたが、実はアカガニは毒があるようで、食べるとちょっと舌がしびれるそうです。
つまり、おいしくないから乱獲されず大量に繁殖できているのですね。
満潮時でないときは道路ではちらほらと見かける程度ですが、無視して踏みつけることはせず、運転手以外の人が車を降りて手分けしてほうきなどで道の端まで移動させていました。
私たちゲストももちろんお手伝いしました。
アカガニの産卵を見るために、満潮に合わせて夜中にホテルから海岸へ移動します。
すでに道路はアカガニに埋め尽くされ、踏まないように歩くのが難しいほど。
ライトで足下をしっかり照らして進みます。
海岸ではおなかにいっぱい卵を持ったアカガニが上手に波に乗って産卵していきます。
バンザイのような格好で体をフルフルと前後に降って卵を放出する感じ。
よく見ていると、ときにはうまく波に乗れず、産卵をやり直すアカガニがいるのもかわいいです。
人の姿はほとんどなく、周囲は波の音だけで非常に静か。
その中でアカガニの懸命な産卵は、言葉がないほどに美しい光景でした。
じっとその場に立ち尽くしていると足の甲がちょっとだけくすぐったい。
そう、アカガニが私の足の上を通って必死に波打ち際に向かっていました。
そんなアカガニは産卵を無事終えるとその場で息絶えることなく、10キロとも言われる道のりをまた山へ向かって戻っていくのでした。
皆さんも是非アカガニに逢いにクリスマス島へ!